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[生徒研修風景]

ご推薦いただきました

スパイラルでは、アーティストの制作支援を目的として結果的に少しばかりのコレクションが存在する。その中に、巨大な絵画をフレームから外し保管中の作品があり、状況確認の為の点検を行った所、画面の約四分の一程の絵の具が表面から崩れ落ちる事態に遭遇した。さながら干上がった干潟のごとくであった。当然、会社の資産であるからただ事ではないし、アートを愛する者の一人として目を疑う状況であった。当該作品、何とアクリルで描かれた下地の上に油彩を施した、一般的には考え難い描かれ方をしていた。これでは完全な状態で保管していたとしてもやがて崩落してしまったはずだ。

一見すると修復不能と思われる程のダメージに感じられたが、何とか修復を試みたいと考え、数社の修復家に相談。修復家達は一様にこの作品の状態を見ると異口同音、修復不能であるとか、費用が幾らあっても足らないとの診断を下した。

そうした中、鎌倉絵画修復工房を主宰する加賀さんと出会いご相談した所、初見は他の修復家と同様の反応であったが、巨大でありダメージが酷いので、時間は掛かるが加賀さんが主宰する修復教室の教材として時間を掛けて対処して良いのであれば修復費用を度外視して引き受けても良い、という、我々にとっては有難いお申し出を頂戴し、結果的にお受け頂いた。

それから約一年、数百と言う途方も無いジグソーパズルと化した作品は見事再生、再現された。加賀氏のこれまでの経験と技術、そして芸術に対する深い愛情と後進を育成しようと言う情熱がこの困難な仕事を可能にしたのだと思う。

 

加賀さんは、西洋美術の殿堂ルーブル美術館で技術を磨き、類い稀なる技術を習得した。加えて、アートに対する豊かな知識と愛情をお持ちだ。痛んでしまった作品が輝きを取り戻すに違いないと確信出来るのだ。

難しい仕事であればある程、彼女をお勧めしたい。

 

加賀さんのスタジオは陽光に満ちた丘の上にある。スタジオで誕生間もない姿に再現される作品が、喜びの声を上げる様は見ていて心地いい。

 

 

2014年7月

株式会社ワコールアートセンター

スパイラル

チーフキュレーター

岡田勉

2016年 岸田劉生の風景画を修復学校の生徒と共に修復しました。

岸田劉生の真作作品を御所蔵だった I様。個人の方であり、ご予算に限りがあり乍、作品の状態は殆どの絵具層がジグソーパズルのように剥落して額縁に貯まっていた!状態でした。話し合いの結果修復学校の生徒と共に長い時間をかけてじっくりと直す事で決定、通常の半額以下のお見積もり価格で、完全な修復をさせていただき、納品いたしました。以下はI様のご感想です。

「この度は大変に修復が困難な絵画を本当に親身になってきめ細かく直していただきまして有り難うございます。本当に綺麗になっておりました、どうもありがとうございます。」

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